20代 母のお話

のり子、母親業終了のお知らせ

2018/02/23

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私が学校を卒業し社会人になったその年の暮れ。

母が唐突に宣言した。

末っ子の私が社会人になったことで、母親としての義務は終了した。これからはそれぞれ自立して生活するように、とのお達しだった。

年末にした宣言だったので、まずはお正月から何もしないと言われた。

毎年作っていた年越しそばは、

どん兵〇に。

毎年、材料を買ってきてせっせとこさえていた巻き寿司といなり寿司は、

「自分で好きに巻け」と手巻き寿司に。

ただし中に入れるオカズは用意してくれた。

そして、つき合いで買うか自分で作るかしていたおせち料理は、

各自、食べたいものを自分で用意することに。

台所はいくらでも使っていいから、自分でどうにかしろとのことだったので、私は大量のからあげを作った。

姉は伊達巻が好きなので、スーパーで伊達巻を買ってきた。

お正月の準備はこれにて完了。大好きなからあげが好きなだけ食べられるので、私は大満足だった。

しかし、自分で宣言をしたわりには、何十年と主婦をしてきた母にとってこの光景は耐えられるものではなかったらしい。

とにかく口を出す、口を出す。

手巻き寿司も用意した後、「本当にこれでいいのかね? 問題ないのかね?」とひたすら不安がり、お重の乗らない寂しいテーブルに「何か別に作ろうかな……」とウロウロしていた。

唯一、母が「すっごい楽」と言って満足したのは年越しそば代わりのどん兵〇だけだった。

ン十年も主婦業をしていたら、そう簡単に辞めるっていうことはできないんだなあ、と思った出来事だった。

結局、翌年からはおせちは作らないまでも、テーブルの上には豪華な料理が並ぶことになり、母の「母親業終了宣言」はあのお正月の数日だけで終わることとなった。

ちなみに、どん兵〇だけは今も出続けている。

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