20代

【後編】のり子、衝撃と恐怖で支配された、強烈すぎた祖母の法事を語る

2018/02/23

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【前回までのあらすじ】

初めて行くお寺は半端じゃなくすごかった!

掃除がされてない境内、虫の死骸ばかりの公衆トイレ、何年物かわからないクモの巣たち。

中に入れば3年前の新聞に、湿って一部カビた座布団。掃除はされてると思うけど、靴下の裏がザラザラいってたから本当のところはどうなのか……。

誰もが帰りたいと願っていたところに、ようやく現れた住職! ちょ、おま、どこ隠れてたんだよ!

呼んでも一向に出てこなかった住職が、裏からノソノソと出てきた。

しかし挨拶はなし。

こちらが挨拶をすると、「……ハイ、コンニチハ」と非常に消極的な返事が返ってきた。あれかな、人見知りなのかな?

私たちは座れそうな座布団もなく、どうしようかと所在なさげに立っていたのだが、住職は気にする様子もない。

住職はノソノソと歩いてきて、ノソノソと柱の陰から豪華な座布団を取り出し、

それに座るといきなり読経を開始した。

お、お前だけいい座布団使うのかよ!!

っていうか、開始の合図とかないのかよ!!

みんな、慌てて直に畳に正座をする。私も本気でイヤだったが、畳に座った。辛かった。

しかし、何だろう。不思議な感じだ。

ここに来るまでの流れがあまりにも強烈すぎて、一周回って楽しくなってきた。

ここまでスゴイお寺はそうそうないんじゃないの? 人見知りなんだか変わり者なんだか、この住職のマイペースさもちょっと面白い。

いやあ、本当にスゴイ思い出になりそうだなあ。

この読経が終わればすぐに脱出できるんだし、と私はのん気に考えていた。

住職の読経を聞きながら、ぼんやりと本堂の内部を観察していた私の目の端に何かが映った。

内陣(ご本尊が置かれているところ。きらびやかな物がたくさん置いてある)の左のほうは人が出入りガラスの扉があるのだが、それがスーーッとひとりでに開いたのだ。

そこから、何かが這い出てくる。

私はハッと息を飲んだ。

そこは光が当たらない場所で、薄暗くて、何が起こっているのかよくわからない。だが、明らかに何かがうごめいている。

私はその正体を突き止めようと、必死で目を凝らして見た。

いったい何がうごめいているのか。その正体は幽霊と呼ばれる物体なのか。これは現実なのか。

暗闇に慣れてきた目が映し出したものとは。

恐怖でプッツンするかと思った。

扉から、ズリズリと這い出てこようとするおばあさん(幽霊?)。

しかしほんの数秒の間を置いて、おばあさん(幽霊?)はシュルシュルッと奥に体を戻し、そのままガラスの扉はスーーッと閉まった。

たった数十秒の出来事だった。

私は本気で幽霊を見たのだと思った。

やはりお寺だから幽霊も普通に出るんだと思った。

しかし読経が終わった後。

さっきのおばあさんが普通に出てきた。

足が悪いらしく、這って移動しているらしい。それもちょっと怖かった。

しかも困ったことに、読経が終わったらすぐに出ようと言っていたのに、スイカを渡されてしまった。これはやはり「ここで食べろ」ということだろう。

「いらない」とも言えず、スイカを受け取る私。

さらにおばあさんは「お茶の用意もあるんですよ」と言い出した。全員に緊張が走った。

衛生的な面で、ここでお茶を飲むのは控えようという話をさっきしたばかりなのだ。

ただ、ここは水道が止められているはず。だからお茶を飲むことはできないだろう。そんな一筋の希望も、おばあさんの「ついさっき水道代を払ったから、お水出ますよ」の一言でついえた。

弱々しく「お茶の用意が……」と言われたら、「いりません」とはとても言えない。それはここにいる全員がそうだった。

みんな、ものすごい困った表情をしつつ…………観念した。

スイカを切るための包丁と、急須やコップなどのお茶セットを持ったおばあさんに礼を言い、私は包丁を手にした。

スイカは持って帰ることにした。

スイカはありがたく持って帰ると決めた。誰がなんと言おうと、絶対に持って帰る。ここでは食べない。

じゃあ、お茶だけでも……。

急須にお茶っ葉を入れようと、急須の蓋を開ける。

砂みたいな黒いのがたくさん底にたまってた。

ちなみにコップのほうにもたまってた。

さすがにお茶もいらないとは言えず、でも急須とコップを洗い直すことに成功し、泣きながらお茶を飲んだ。味はわからなかった。

全員、辛い顔をしながらお茶を一杯ずつ飲み、そしてすぐに逃げ出した。

ここまで、たった1時間の出来事だった。

今でも、夢のような出来事だったと思う。悪夢のほうね。

お寺は儲けてると頭っから信じ込んでいたので、水道まで止められるような状況になるお寺もあるんだな……と勉強になった。

このお寺には、あれから恐ろしくて一度も足を運ばなかったが、親族が何年も後に行ってみたところ、住職が変わってお寺も綺麗になっていたそうだ。

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